Risk Assessment Report

調達スキーム変更と
事業リスクへの影響

市場ヘッジからBack to Back(直直取引)への移行に伴う、キャッシュフローおよび資産価値への影響分析。

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これまでの手法:市場ヘッジ

先物市場を利用し、在庫保有期間中の価格変動リスクを相殺する仕組みです。

ヘッジのメカニズム

右の図はスクロールに連動します。
相場が下落し「現物の価値」が下がっても、事前に売っておいた「先物の利益」が膨らむことで、タンクの総量(資産価値)が一定に保たれる様子を確認してください。

現物保有分 (価格変動により減少)
先物売り利益 (価格下落で増加)
SCROLL INTERACTIVE

市場価格

20,000円
先物益
現物価値
資産総額 (一定)

メリット

  • 完全なリスクヘッジ:
    現物の買いと同時に先物売りを建玉することで、在庫期間中の価格変動リスクをほぼ100%回避できます。
  • ヘッジ会計の適用:
    デリバティブ損益が売上および原価に計上されるため、会計上のPL(損益計算書)が相場変動に左右されず、安定した業績推移となります。

デメリット

  • ベーシスリスク:
    現物と先物の価格差(スプレッド)の変動により、完全なヘッジとならず予期せぬ損失が出る可能性があります。
  • 運転資金の圧迫:
    先物取引を行うための「委託証拠金」が必要です。相場変動により追加証拠金(追証)が発生すると、多額の現金が拘束されます。

今回、手法を変更する理由

Reason 01

運転資金の圧迫 (証拠金高騰)

通常時 8.6億円

@143.6万円 × 600枚

現在 21億円

異常事態: 約2.5倍に膨張

21億円 規模

資金が拘束され、月商40億円規模の事業に対し致命的な機会損失を生んでいます。

Reason 02

ベーシスリスクの顕在化

価格推移イメージ

先物(割高) 現物
乖離拡大

2億円 超 / 月

現物と先物の価格連動性が崩れ(先物高など)、ヘッジが機能せず損失が拡大しています。

切替後の手法:Back to Back

先物を利用せず、毎日の仕入れと売却の数量・タイミングを合わせる手法です。

今回の変更適用範囲と
切り替えタイミング

Au市場ヘッジ残高(平均在庫 600kg)の内訳

その他
280kg
1/23~2/5
(導入後最初の10日間)
320kg
Auプレート
相田社プロセス在庫
(32kg×10日)
市場ヘッジ継続
市場ヘッジ解除 (裸)

切り替えフロー(1/23仕入分より)

1月23日
1/20仕入
32kg/日
HEDGED
1/21仕入
32kg/日
HEDGED
1/22仕入
32kg/日
HEDGED
1/23仕入
32kg/日
NO HEDGE
1/26仕入
32kg/日
NO HEDGE
1/27仕入
32kg/日
NO HEDGE

時間の経過 (市場ヘッジ有から無へ推移) →

仕組みとメリット

IN

仕入れ

同日・同量

OUT

売却

  • その日の相場で「買って売る」ため、キャッシュマージン(粗利率)は安定します。
  • 先物取引の証拠金が不要となり、現状で最大10億円程度の資金流動性が回復します。また、今後の証拠金の負担を減少させます。

デメリットとリスク

PL(損益計算書)の変動

売上高が相場価格に完全に連動するため、相場変動に伴い売上規模が大きく増減します。また、ヘッジ会計が適用されないため、在庫評価損益や相場変動の影響がPLに直接計上され、会計上の利益が不安定になります。

在庫資産の無防備化

上図の通り、プロセス在庫320kg(時価30億円超相当)に対するヘッジが外れるため、相場下落時にはB/S上の資産価値が直接毀損します。

Back to Back取引の構造的詳細

純度99.99%Au (32kg/日) のフローにおけるリスクと収益の発生メカニズム。

Phase 1: 蓄積期 (1/23 〜 2/5)

仕入のみ発生 / リスクポジションの構築

Risk Exposure (BS)

0kg → 320kg

0kg
仕入 32kg @98.5%
販売 32kg @市況+10円
確定利益

BSリスクの蓄積

毎日32kgの仕入(非ヘッジ)のみが発生します。
10日間で合計320kgのリスクポジションがBS上に積み上がります。
この320kgは常に時価評価の対象となります。

オペレーション収益

まだ販売が開始されていないため、日々の確定利益は発生しません。
精錬プロセス(10日間)の待機期間です。

重要: この期間に積み上げた320kgを「リスクポジション」として認識し、管理する必要があります。

相場変動シミュレーション

ヘッジ解除後(1月23日以降)に相場が急変した場合の、
移行期間(1/23〜2/5)と完了後(2/6〜)の財務諸表への影響額試算。
前提: 1/23基準価格 26,200円/g (資産総額 約84億円) | 32kg/日の切替

B/S (貸借対照表)

1/23 〜 2/5 (移行期)

2/6 〜 (完了後)

P/L (損益計算書)

1/23 〜 2/5 (移行期)

2/6 〜 (完了後)

C/F (キャッシュフロー)

1/23 〜 2/5 (移行期)

影響なし (安定的)

2/6 〜 (完了後)

支払(T+2)と販売(T+3)の入出金サイトズレにより、相場高騰時は1日分の立替資金が増加しますが、約定時点で利益は確定しており、回収は確実です。

会計上の論点:PL安定化への課題

在庫の評価・原価計算方法の選択により、経営管理上のPLの見え方が大きく異なります。

検討事項 A

ポジション管理アプローチ

「金は金」という思想 / 総量管理

処理のイメージ

最初(1/23〜2/5)に構築した10営業日分(320kg)を「固定のリスクポジション」としてBS計上・管理し続けます。
その後の日々のオペレーションは、「当日仕入れたものを、同日に販売した」とみなして計上します。

期待される効果

  • PLの安定化: 売上原価が当日の仕入価格ベースとなるため、相場変動の影響を受けず、加工賃等のマージンが明確になります。
  • BS管理: 320kgの評価損益は別途BS上でモニタリングします。
検討事項 B

個別紐付きアプローチ

現物の色付け / 個別法・先入先出

処理のイメージ

現物に色付けを行い、物理的なモノの流れに即して処理します。
例:2/6に販売したポジションは、1/23に仕入れた在庫であるとして、個別的に原価・損益を計上します。

懸念される影響

  • PLの変動: 売価(当日)と原価(10日前)のギャップがPLに直撃します。
  • 管理の難易度: 相場次第で大幅な黒字や赤字が出るため、予実管理が極めて困難になります。
論点: 会計基準(棚卸資産の評価方法など)との整合性を保ちつつ、実質的なビジネスの実態(スプレッドビジネス)をPLに反映させるために、 「Option A」のような運用が可能かどうかが重要な検討ポイントとなります。